ココナッツオイルは体に良いとされていますが、最近「実は害ではないか」との議論が沸き起こっています。
そして先日、ハーバード大学公衆衛生学部の教授が「ココナッツオイルは毒である」と明確に語りました。ある講演で語られたその動画がYouTubeで100万回再生を超え、ここ最近栄養の専門家たちの間で様々な議論が巻き起こっているようです。
科学的な根拠、調査結果を基にした主張ではなく、あくまで個人での意見と捉えられますが、気になりますね。
この記事では、ココナッツオイルが健康に害だとする教授のコメント真相についてご紹介します。
ココナッツオイルは本当に毒なのか
ココナッツオイルは最も害のある食べ物のひとつ。純粋に毒と言ってもいいくらい。
ハーバード大学公衆衛生学部(Harvard TH Chan School of Public Health)のカリン・マイケルズ教授はこのように語っています。
この主張の根拠は、ココナッツオイルには”悪玉”コレステロール(LDL)を悪化するとされる飽和脂肪酸が多く含まれているからです。WHO(世界保健機構)によるガイドラインでは、飽和脂肪酸はコレステロール値や心臓疾患リスクの上昇が懸念されるため、摂取量は、1日の摂取カロリーのうち10%以下にすることを推奨しています。
ココナッツオイルには飽和脂肪酸が80%程度含まれているので、1日の摂取カロリーを2,000キロカロリーとすると、大さじ1.5杯くらいまでならOKということになります。
飽和脂肪酸とは
脂肪酸の一種です。室温で固体になるのが特徴で、赤身肉や牛乳、チーズなど乳製品、ココナッツオイルなどに含まれます。ココナッツオイルはこれら食品の中でも飽和脂肪酸の含有量が特に多く、約80%が飽和脂肪酸です。
飽和脂肪酸の摂取が心臓疾患を引き起こすことはまだ科学的に証明されていません。21の調査研究を俯瞰的に調査したメタ分析が行われましたが、飽和脂肪酸の心臓疾患リスクを上げる可能性については結論付けられませんでした。
一方で、オメガ3、オメガ6脂肪酸に代表されるような単価不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸と置き換えることで、心臓疾患リスクが低減されることは証明されています。
そのため、あえて心臓疾患リスクを上げる可能性がある飽和脂肪酸を選ぶ必要はない、というのが”ココナッツオイルは悪”説を唱える専門家の意見のようです。
それ以外のココナッツオイル反対派の意見
2017年にはアメリカ心臓病学会(American Heart Association)がココナッツオイルに関する評価を発表しています。その中では、ココナッツオイルが健康だとしたのは栄養士のうち37%である事実を紹介した上で、次のように結論づけられています。
ココナッツオイルはLDLコレステロール値を上昇させ、心臓疾患のリスクも上げる。健康に良いとする効果を証明した結果もないことから、ココナッツオイルは使わないようアドバイスする。
英国栄養財団(British Nutrition Foundation)は、「ココナッツオイルの健康効果を示す科学的なエビデンスは存在していない」とした上で、「食べても問題ないが、少量に留めること」と伝えています。
こうしたコメントが様々な栄養関連の団体から発表される中、今でもココナッツオイルに関するマーケティング活動が活発に行われており、英国は過去4年間で売上が16倍の16.4百万ポンド(約24億円)、アメリカでは2015年に過去最高の229百万ドル(約260億円)にまで達しました。
ココナッツオイルは体に良いスーパーフードとして出回っています。そしてアメリカ心臓病学会の調査によると、アメリカ人の73%はココナッツオイルを健康だと認識しているそうです。
一方で、実は健康への効果を示す信頼性の高いエビデンスは存在しないとのこと。アメリカの食生活ガイドラインの検討委員会メンバーであるタフツ大学の栄養学教授もそのように断言しています。
ちなみに、オリーブオイルやアボカドオイルは一価不飽和脂肪酸、キャノーラオイルは多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。これらの油は、科学的な調査結果や専門家の意見でも、積極的に摂り入れるようアドバイスされています。健康を意識するなら、ココナッツオイルよりもこっちを選びましょう。
そもそもなぜココナッツオイルが健康だと言われ始めたのか
2003年にコロンビア大学が発表した複数の論文において、中鎖脂肪酸が体脂肪燃焼を助けるという内容が発表されました。
1996年の論文でも、1日15-30gの中鎖脂肪酸を摂ることで、カロリー消費量が5%上昇したとの結果が発表されています。5%というと1日で約120キロカロリーくらいが目安となります。
そしてココナッツオイルには中鎖脂肪酸が含まれます。
そのため、中佐脂肪酸を含むココナッツオイルを食べるとエネルギー燃焼が加速する、と解釈され、ココナッツオイルが健康に良いという概念が作られたようです。
しかしここで要注意なのは、ココナッツオイル含まれる中鎖脂肪酸は14%だということ。そんなに多くありません。
そしてコロンビア大学の調査では、調査対象者に対してココナッツオイルが与えられた実績もありませんでした。(…なんと!)調査対象者に与えられていたのは、中鎖脂肪酸のみを抽出したMCTオイルでした。
しかし、この調査が発表された後には、ココナッツオイルはたちまち「スーパーフード」となったのでした。
まとめ: 結局ココナッツオイルは体に良いのか
現時点では、信頼性の高いエビデンスに基づいて、ココナッツオイルを害だとする研究もなければ、健康に良いとする研究もありません。
科学的エビデンスに基づく健康効果が証明されているのは、オリーブオイルやナッツ、魚に含まれる脂分です。
健康を意識してココナッツオイルを選ぶなら、オリーブオイルの方が断然おすすめです。
ココナッツオイルが好きなら食べても問題ありませんが、スーパーフードと期待するのはやめておきましょう。
この情報が少しでもお役に立てていますように!
(出典)
The Guardian, “Coconut oil is ‘pure poison’, says Harvard professor” (August 22, 2018)
https://www.theguardian.com/food/2018/aug/22/coconut-oil-is-pure-poison-says-harvard-professor
ASHLEY MAY | USA TODAY, “Coconut oil is ‘pure poison,’ Harvard professor says in talk on nutrition” (Aug. 23, 2018)
https://www.usatoday.com/story/news/nation-now/2018/08/22/harvard-professor-coconut-oil-pure-poison/1060269002/